ウラブタの上

箱の中の神さま

ゼノブレイド2とは何だったのか②

 以下は聞きかじりの知識でメスを入れ、可能なら自分なりの推論を導こうとするものである。
 大して導けなかった……(以下、ネタバレ全開)
 
 全編を通して、ワクワク感がスゴかった。

・物語への導入
 新城カズマ氏の類型でいう「彷徨える跛行者」の、跛行をきちんと行っている。主人公は死ぬことで普通の人ではなくなり、英雄としての属性を与えられる。
 そしてラノベにありがちな、ヒロインと(まだ不完全な)一時的な契約を交わす。以降はことあるごとに試練を与え、これを乗り越えることで契約を更新し、最終的にはお互いがお互いを信頼する完全な契約が結ばれるのだが……ゼノブレはそうなるまでにかなり間が開いているのが特徴的だった。

 ホムラは秘密主義で関係はあまり進展せず、主人公を試すのは主にヒカリの役割だったが、これといった試練はあったようなないような。ストーリーがサスペンスよりだから全部試練っちゃ試練と言えるかもだけど。
 決定的だったのは「挫折を経験したあと、敵に囚われたヒロインを助けにいく8話」……えらく先延ばしにしたものである。それでいて違和感が少ないのはやっぱりゲームとして面白かったんだろうな。

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 色んなところを冒険させないといけないし、仲間キャラも掘り下げないといけない。
 だからとりあえず試す然としているヒカリを配置して、テキトーに美味しいイベントをブチ込んで時間を稼いだ感じになるのかな。うまくハマった良い戦略だと思う。
 
・計算されたストーリー展開
 あとは、沼田やすひろ氏の13フェイズ構造もピッタリハマる。
 ①日常を描く②事件が起こる③苦境に身を置く決意をする
 ④苦境に立たされる⑤助けが入る⑥主人公が成長する⑦いい方向に転換を試みる
 ⑧試練が出現する⑨主人公は一度、破滅する⑩契機が与えられ、復活する
 ⑪敵と対決し、⑫これを排除することに成功する⑬主人公が目的を達成し、読者は満足する

 ゼノブレ2は見事にこの繰り返しで物語が進んだと思う。
 いくつか前後するけど、ヴァンダムさんの死なんかは主人公を大きく破滅させ、かつ成長を促した要素になるだろう。

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・その一方で、陥穽もある
 ただ、これに当てはめると、破滅からの回復のシーンは少し描写が足りないことに気づく。
 主人公は強大な敵であるシンに破れ、ヒロインをさらわれてしまう。失意の主人公はすべてを諦め村に帰ろうとして、一時仲間に見捨てられる……んだけど、見捨てられないんだよね。それどころか、一緒に新しい武器を探しに行こうと協力までしてくれる。破滅が足りねンだわ

 だから、試練の洞窟に力を奪われ、仲間が辛い思いをする中で主人公があっけらかんとしてたのはマイナスポイントになる。ジークを、メレフを、主人公は労るべきだった。ニアだけでなく。

 ストーリー上、ここはニアの成長ポイントでもあった。だからそっちにフォーカスが行っちゃったんだと思う。ニアが主人公を信じるかどうかのお話を展開し、そして信じる確信が得られたことで、それをもって主人公の成長とする。

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 この辺も実は急にイヤボーンしただけのような……

 主人公が成長し続けたら物語はすぐ終わっちゃうから、代わりに狂言回し役のキャラクターを成長させてすり替える、ドラマなどでよくある高等テクニックがさりげなく使われている。
 そういうところがスゴいんだよゼノブレ2は。なのに描写が妙に足りないときがある。それが惜しい。
 仲間から認められるという試練がひとつ抜けちゃったために、契約がうまく更新できていないように見える――結果、説得力が落ちてしまう。

 さっきまでウジウジしてた主人公が急に達観して新しい剣は要らなかったんだ! とか言われても読者は困惑してしまうんじゃないだろうか(仲間は困惑してました)。

 いや、妙なニアへの告白シーンで埋め合わせしてるのか……? まさかアメとムチを現代風に使いこなしている……? 
 最近は主人公を失敗させると気持ちよく感情移入できないので、そういうのを避ける傾向にあるらしいから、うまく誤魔化してアメだけを利用したのかもしれない。
 だとすればユーザーへのマーケティングが完璧なシナリオということになる。いい戦略だ……。

・テーマについて
 端的に言えば人間と人間でないものの共存という王道モノ。よくある話なだけに色々アプローチできそうだけど、今回は阿部公彦さんの成熟に関する論法を拝借する。
 最初に結論を言うと、主人公は成熟するが、成熟を必要としないブレイドと対立するのは必然なのではないか。

 普通の共存モノと違う点は、人間がブレイドを使役(=支配)するという一点だろう。
 いやあんまり違わないな。ガッシュとかゼロ使だって使役だし、最近の作品で言えば魔都精兵のスレイブなんかもそう。
 それらとゼノブレはどう違うのか。使役色はかなり強い。コアが起動するとそれまでの記憶をすべて失い、強制的にパートナー関係になる。あれ、全然違うやん。ブレイド、モノじゃん。

 不思議なのは、記憶を失っても、人格はだいたい同じという点。この辺設定ガバってると思うけどとりあえずスルーこの記憶リセットによって成長がない=成熟がない=未来がないとすれば、シンのように絶望するのは当然である。
 そこでシンは最愛の人間の心臓を移植することでマンイーターとなり、コアをリセットさせず恒常的に自分を保ち続ける選択をした。そしてこんな世界の不条理を除くために人間と敵対する。

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 というのが梗概だが、さてこのシン、ラスボス戦前に主人公を助けて死亡してしまう。
 何故か。ひとつは、主人公に絆され、その考え方に感化されたからだろう。
 穿った見方をすれば、自分の目的の価値が主人公のそれ以下だと認めたから、ということになるか。
 このあたり、実際にプレイすると特に違和感なく描かれていて感心する。三つ巴で、シンと主人公と明らかにこじらせちゃった悪役がいて、その悪役を倒すためにシンが死んでくれるw
 で、最後に残ったシンの仲間の分からず屋を分からせて、世界を救ってハッピーエンド。

 いやぁ、成熟しないという設定をうまく物語に落とし込んでるよねー……すごい。
 さて、阿部公彦さんは著書の中で、

成熟を忌避し、幼いころに見た夢にこだわり続けたとしても、
肉体は確実に変化し、人はやがて老いて死んでいく。
それでも幼さや可愛さの夢に酔い続けることはできるのだろうか

 と問題提起をしている。
 酔い続けてるよ! ゼノブレ2、それを表現しようと頑張ってるよ!(発作)
 おっと、このままではただ他人のフンドシで相撲を取っただけだからなんか考えないと。
 
 この作品では、ブレイドは成熟しないが故に完璧な、人間の所有物として描かれている。
 だから、その価値の是非を問うなら、その表現の仕方がいかに革新的かを考えればいいんじゃないかな。

 オタクはアニメの美少女が好き。通常、そこに現実臭がしてはいけない。ただ、たまに味付けでゲロを吐くとか、暴言を吐くとか、地下足袋を履くとかして成功しているキャラも居る。
 だからさ、こんな完璧なブレイドが、人並みに悩むとすれば、葛藤するとすれば、それはどうしようもなく強烈な味付けになるんじゃないの?
 しかも制限時間までついている。いずれリセットされれば記憶を失う。キャラクターにとっても現実のプレイヤーにとってもそれは死も同然で、メタ的にはブレイド全員が「ヒロイン難病モノ」の類型をその身に宿しているということになる。
 そりゃ、感動するでしょうよ……。ブレイドという舞台装置の破壊力、推して知るべし。

 一方で、主人公は普通の少年であり、成熟する。成熟するが故に完璧ではなく、語る理想も夢物語である。

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 それでもその理想に絆されてしまうのは、下野紘氏の熱演のおかげ……だけではあるまい。
 そこはここに至るまでに主人公に感情移入をさせきったゲームの完成度の高さを褒めておこ。

 で、ここまで持ち上げといてアレだけど。
 天の邪鬼な俺はこの主人公が実は嫌いだったりする。
 もう少年じゃないからさ……青年だからさ……どこかダークになって欲しかったのよ。

 成熟するということは幼いということ、成長するということは前向きに時間が流れるということ。
 そう、主人公と違って市井に生きる現実のプレイヤーは、通常、流れていく時間に対して焦りとか、戸惑いを覚えるものだ。深夜のファミレスで青年が夢を語る光景に見る際どさよ。ニートが将来を憂うアレよ。
 そういう小さな不安、現実から外れたという疎外感――そういうものをできれば描いて欲しかった。

 まぁ、今作のテーマを表現する上でそんなことする余裕はまず無いのは分かる。
 ただ唯一欠点を上げるとすれば「破滅が足りないこと」だから、少しくらい主人公は汚れるべきではなかったか。あるいは最初からスレていて欲しかった……のは俺だけかな?
 レックスならそれが出来た気がするんだよな。
 マルベーニみたいな疎外された人に、レールから外れてしまった人に、大丈夫だよって言って欲しかった。いやもちろん全人類を支配することが是なわけじゃなくてさ(イワンデイイ)。

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 あ、ちなみにその役割はジークが担ってます。マルベーニにも貧民を保護したりする善の部分があるってしっかりフォローしてる。ジークはもう大人、なんだね。

 ただここだけは譲れない。成長とは何かを得るだけでなく、失うことでもある。
 テイルズオブジアビスで断髪後のルークが自由奔放さを捨ててしまうように、成長によって失った何かをうまく描けたポイントだったと思うから。

 でまあ俺が何を言いたいかっていうと、俺にもコアクリスタル寄越せってことなんだよ。