アダマントシールドはクリティカル軽減の夢を見るか?
「バタフライエフェクト」という言葉を使うとき、どうしても身構えてしまう。
気にしなくてもいいようなものを気にするところに、衒いを感じるからだろうか?
ブラジルの蝶のはばたきは、テキサスで竜巻となる――。
では、僕はどこで「そのスイッチ」を入れたんだ?
などと意味深なことを言っておいて、その実ただのソシャゲの記事である。
かねてより好評配信中であるエピックセブン、ゲームイナゴの諸賢におかれましては、さぞ楽しくプレイされていることと存じ上げます。
俺も楽しくプレイを続けていて、今日の昼ごろにプレイヤーランクが50の大台に乗った。
もう初心者を卒業して中級者になろうという頃だが、諸般の事情により足踏みする日々を送っている。
ひとつは、キャラ貧であること。リセマラ以後一切ガチャを引いていないので、闇川とラヴィ、闇ロゼ、交換キャラのユナが俺の手持ちのすべてだ。
★5の2体を★6にしたあとは、何をしていいのかサッパリ分からない、そんな状態である。
停滞のもうひとつの理由は、装備のドロップに恵まれないことだ。現状作れる最高の装備を毎日錬金しているのだが、型落ち採用も難しいようなシロモノしかできない。
というわけで、初心者ミッションでもらえる70装備をつけた闇川が俺の最高戦力である。コイツひとりでデイリーから育成、対人までをすべてこなしている。
それができるキャラパワーがあると云えばそうなのだが、やはり釈然としない。このゲームを楽しめるところまで行っていないからだ。
そんな悩みを抱える俺の前に、突然イセリアが現れた。おはガチャ一発、感謝の邂逅である。
実際は装備がまるで無いので活躍するにはまだ時間がかかるのだが、当面の目標が更新されたのが大きかった。手持ちの雑魚を育てるより、イセリアを★6にするためにファームするほうが大分アドである。
そこまでは良かったのだが……ここでひとつ問題が発生する。
アダマントシールドがどこを探しても無かったのだ。
ただでさえロクな遺物のない俺が持っている貴重な★4遺物、アダマントシールドが無い。
恐らくは連日のファーム中、溢れたカバンの整理中にすっとんでいったのだろうが、これはかなりショックだった。敵からのクリティカルダメージを軽減する遺物――その有無は防衛パーティの成否に関わる。
▲図鑑は明るくなっているので、たしかに存在していた
その一方で、こうとも考えられる。
「もしアダマントシールドを失っていなければ、イセリアは手に入らなかったのではないか」
ソシャゲのガチャは毎秒、もしくはもっと短いスパンで乱数が発生しているはずだ。もしどこかでアダマントシールドを売るという一瞬がなければ、その後の俺の行動が変わり、おはガチャでイセリアを引き当てるという結果は生まれなかったのではないか――?
そう思うと、狐につままれたような気分になる。
ソシャゲは現代人に浸透した文化だ。学生がある朝にガチャを当てれば、気分はよくなり、その後の学校での人間関係に影響をおよぼすだろう。もちろん、その逆も――
だから、今日の夕方、父親がバイクと接触事故を起こして警察沙汰になったのも、何らかのバタフライエフェクトの結果なのだ。
俺がアダマントシールドを失くさなければ、イセリアは手に入らなかった。
俺がアダマントシールドを失くさなければ、父親は事故を起こさなかった。
形而上の運命について考える、僕の形而下の脳細胞を、いまは労うことしかできない。