文学青年保存館

2023 7.25 ブログの更新を停止しました

Mili「Excαlibur」和訳と考察

「わたしはいちばんの宇宙飛行士になる。
ぜったいだよ、うそじゃないからね」

そう言ってぼくの手を取ったきみの瞳は
銀河の色にきらめいていた

ぼくらはガラクタの山をあさりまだ見ぬ宝物を探した
きみが楽しい歌をやさしく歌いあげるように
ぼくらは願いをこめてチタニウムスペースシャトルを作った
これでいつの日か世界が救われますように

ルララ ラルラリラ
ぼくらはそれにエクスカリバーと名付けて空へと送った
でもそれはすぐ世界の端っこにぶつかってバラバラになってしまった

「ねえ、心配しないで。一緒に夢を叶えよう。
こんなことでくじけてる場合じゃないよ、ぼくがそばにいるんだから」

ぼくらはガラクタの山をあさりまだ見ぬ宝物を探した
きみが楽しい歌をやさしく歌いあげるように
ぼくらはぼくらのためにチタニウムのサイボーグを作った
これでいつの日か世界が救われますように

「私の骨はチタニウムで出来ていますが、心は星で出来ています。
さぁ私の肩にお乗りください、私はあなたがたのエクスカリバーです」

 

 

 

 以上、英語がおぼつかない僕が必死に意訳しました。
 一番訳せないなコレと思ったのは

As you softly sing the sweetest delightful song
We've built a titanium cyborg out of me

 の部分。なんでWeで始まって所有格がmeなのかは未だに分かりません。誰か教えてください。
 out of meは「僕から」とするべきなのかもしれないけど、
恣意的に矯めて「ぼくらのために」とした。
 というかもしかしてAs you~はWe've digged~のほうにくっつく文章だったりする?
 セリフは完全に趣味が出た。最後のサイボーグはホントはいなくて、僕と君だけのお話なのかもしれない。その場合は5割くらい意味の取り違いしてるね(・。・;
 アストロノーツは僕かもしれないわけだ。

 曲のことを言うと、素晴らしい歌詞だと思った。
 物語のように進行するタイプの歌で、行動の流れが美しい。
 行動ひとつとっても、少年少女特有のニクさを上手く表現できている。

 よく考えると軽く宇宙船やサイボーグを作ってしまう彼らは何者だとなるが、
 そこは曲特有の力学が働いているから大丈夫。あるいはアルバムを通して聞くとその答えも分かるのかもしれない。

 英語の少女っぽいクリアな発声もとんでもなく心地が良い。
 アルバム全体がゲームやメカを主題にしているらしく、機械っぽい歌声とも取れる。
 マイボーンザタイタニアム!

 今回は歌詞全文を引用したため、もう気が狂うほど追記する。
 2回ある「これでいつの日か世界が救われますように」はかなりズルをした部分だ。
 前半部分ではby this soundとあり、直前の「彼女の歌」によって世界が救われることを示唆している。
 後半部分ではby youとあり、救済は彼女によるものであることがほぼ明確になっている。
 ただ日本語にしようとするとリズムが崩れる。
 直訳した場合は「だから、いつの日か彼女によって世界が救われますように」となる。今回の和訳では「だから」の部分にまとめて言い含めた形になる。これでは本意を表現できていないから、うまい翻訳とは言えないだろう。

 また、英語には空へ送られたエクスカリバーが壊れる描写があるものの、「すぐに」というニュアンスは含まれていない。ただ、打ち上げてから現実時間において1秒も経たずに壊れているため、これくらいのニュアンス変更に問題はないと思われる。
 むしろなぜ壊れたのかが疑問だ。うまく省略して韜晦することにより情緒を生み出すことに成功している気もするが、単に彼らの技術力の無さが露呈しているだけにも見える。

 しかし曲終盤においてサイボーグを作ったのは彼らなのだ。「まだ見ぬ宝」を見つけ出す探索力および情熱もさることながら、これを宇宙工学的に通用するレベルで運用する彼らの技術力は本物である。
 さりとて形而上的な「世界の端っこ」にぶつかっただけで一度は頓挫しているため、やはり単なる少年少女の空想物語であると断ずることも不可能ではない。

 最後に問題にしたいのは、やはり曲冒頭の「I」がどちらのものなのか、という点だ。聞いた限りでは特に会話文であることを示す区切りなどはなく、その事実に従えばすべてのIは同じ人物のものと考えるのが妥当かもしれない。
 となると、彼女の目がスパークルしたのは、宇宙飛行士を目指す主人公の心意気に免じて、ということになる。
 彼女は世界を救済するほどの歌唱力ないし政治的支配力を持っているから、大言壮語を吐く主人公の力になろうとすることはさほど不自然ではない。

 だが、エクスカリバーがおじゃんになった後、主人公は「心配しないで、君の夢は僕が叶える」と言っている。
 この点を重視するなら、やはり冒頭で啖呵を切ったのはヒロインのほうなのだ。

 ここで大概のオタクは、涼宮ハルヒを想起するはずだ。あらゆる物事の陣頭に立ち、絶大なカリスマと統率力でもって計画を遂行せんとする。希望や「I」自身からチタニウム製の構造物を生み出す能力も、ハルヒが持つ神としての能力に似たものを見ることができる。

 ハルヒは作中で時間が経つにつれ、現実を知っておとなしくなっていった。
 この曲でも、「シャトルが壊れ」「主人公が励ましている」ことから考えるに、一度は挫折したと見ていいだろう。
 キョンによるハルヒの受容はまだ経過観察の段階(ヘタレめ)だが、この曲の主人公は彼女を全肯定したようだ。
 その後一念発起してサイボーグを作ってしまうのだから、その純真な感情の奔流には素直に慄然し佇立するほかない。
 もちろん、同時に愛おしくも思える。

 ふたりはきっと夢を叶えただろうから。

 なお、冒頭のyoutubeはMili公式チャンネルから引用しています。
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