ウラブタの上

箱の中の神さま

世界の終わりに聞きたい曲

 諸賢は世界の終わりに聞く曲のアテはあるだろうか。
 社会が、自分の命がまさに終わらんとするそのとき、自らを鼓舞し、納得させ、ときに後悔させる珠玉の一曲たち――。

 思いあたる曲がないのなら一大事です。
 そんなアナタはおそらく辞世の句のひとつも用意していないでしょう。
 自分が埋まる墓の手配もしていなければ、遺言だってしたためていないはずだ。

 そんなものは本来必要になるべきではないが、もしもということもある。
 やんごとなき事情で世を儚まざるを得なくなったときに備え、ここに我がプレイリストの一部を開陳する。

「ray」――BUMP OF CHICKEN
 バンプは候補が多すぎて一曲に絞るのが難しい。
 なんならゼロでもロストマンでもオログでも真っ赤な空でもふるさとでもピンキーでもハッピーでもファイターでもいいが、
 それでもこの曲を選んだのはやはり、天体観測へのアンサーソングだからだろう。
 自分の原点を肯定するこの曲を聞けば、絶望の淵であっても自らを肯んずることができる。

「anschluss」――the cabs
 あなたにもし別れゆく恋人がいるならこの曲をすすめる。
 変拍子*理解を超えた演奏*堂々と衒う歌詞=エモーショナル。
 曲名はドイツ語で「結びつき」を意味する。君との連結が切れた僕は――。

「Seeds」――Lyu:Lyu
 巷にあふれる曲は、どれもこれも恋愛を歌ったものばかり。
 そのなかで、人間存在の根源にも触れようとするこの曲は強く異彩を放っている。
 真っ白になってもまたそこへ色を着けようとする意志――あなたはまだ持っているだろうか。

「LAST TRAIN-新しい朝-」――knotlamp
 あなたの自我の強度がどれくらい堅固なのか知る由もないが、
 おそらくこの曲の正論ラッシュには耐えられまい。
 否応なく後悔を惹起させ、なけなしの勇気をかき集めさせられる。
 上がった心の温度はとても高いので、周囲の人との温度差に気をつけましょう。

「願イ型紋白蝶ガ宙ヲ舞ウ」――LAST ALLIANCE
 ラスアラも曲が多いからかなり迷ったが、最期に聞くという条件なら候補は絞られる。
 プロメテウスや浄化は曲調が激しすぎ、赤い花は想像の余地を殺してしまうため除外した。
  昨今では珍しくなったロックな思想を持つ彼らだが、この曲においては見事にシングルイシューを歌い上げている。


「つじつま合わせに生まれた僕等」――amazarashi
 僕はこの曲が好きではない。終盤、誰であろうと救われると謳っているのがどうにも解せない。悪人は滅びるべきとかそういうことではなく、中には――いや、多くは語るまい。嫌いということはそれだけ含むところがあるということだ。
 ナイフを持った少年がいて、雑踏が真っ赤に染まった理由。
 そのリリックと妙なる調べに感服する。

「トモシビ」――moumoon
 そういえばこの曲を形容する言葉をもっていなかったことに気づいた。
 ただ痛切。ただ哀切。終わりに際しそこから始めるという転回は生半可な意志でできることではない。

The Glory Days――supercell feat Tia
 あなたに青春時代があってもなくても、この曲があなたのHPをザクザク削っていくことに変わりはない。
 凋落する僕らが栄華の日々を思うのは、心電図に示された必然。
 心音のリズムと同じように、ハレとケは巡り、やがて平坦な日常へと還っていく。

「Wind Climbing ~風にあそばれて~」――奥井亜紀
 アニマックスだったか、キッズステーションだったか。
 どちらかは忘れたが、このアニソンを昔聞いたことを確かに覚えている。
 キズの痛みに見合う何かを求めたなら幻――その冷徹なまでに研ぎ澄まされた視点は、だから心のスキマを埋めることはない。

「絶望と希望」――川嶋あい
 絶望的にゲームのOPと噛み合ってなかった憶えがある。
 ただあのゲームわりと暗かったから、不思議と納得できる部分もあった。
 あの頃は若かった。キミもボクも、企業のコンサルタントも、川嶋あいも。

「キミの記憶」――川村ゆみ
 ペルソナ3をプレイしてしまった方、お疲れさまでした。
 あなたはいま、主人公と同じ道を辿ろうとしています。
 青春がピンと来ない人へアドバイス。夜を駆け抜けたことがあるなら、それが青春だったのです。それはどの季節で、どんな夜風が吹いていましたか。

「空気力学少女と少年の詩」――はな
 この曲はズルい。誰に訊いてもそう言うはず。
 すかぢゆるせねえ……!

「虚空と光明のディスクール――Five Drops 05 -bergamot mint- 霜月凛
 頽廃に甘んじたいあなたにはこれ。でも「甘き死」に来られても困る。分かります。
 それなら典雅にプログレで締めましょう。
 歌詞の内容がよく分からない? 大丈夫。俺の友達の弟の友達が分かるらしいから、今度連れてくる。

「日曜日 / 浴室」――People In The Box
 イントロを聞いた瞬間すべてを悟る。
 月曜から続く連作、全7曲を締める至上の大トリ。とはいえ、初見では最初から通しで聞いても内容はほとんど掴めないかもしれない。
 一曲だけしか聞けないのなら、僕は迷わずこの曲を選ぶ。
 曲の価値が減じないよう、聴く頻度をわざと減らしている。

 ...予想外に記事が膨らんでしまった。まだまだ候補はあるがこの辺りで筆を置く。
 他には――思い入れのあるゲームのインスト聞くだけでも感傷で涙腺に来る。
 当時聞いていたボカロの曲もいま聞き直すとグッサリくるからオススメだ。