文学青年保存館

2023 7.25 ブログの更新を停止しました

あの日つくった爆弾の在処

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 サウンドブラスターのイコライザの設定に悩んでいる人は多いのではないか。
 かくいう僕も音響に関してはシロウトで、どうすればいいのかよく分かっていない。

 ちょっと調べたところ、音楽好きには鉄板の設定があるとの情報を得た。その名はPERFECT。
 口を半開きにして、掠れた息を吐き続けた。
 父が差し込みに苦しんでいたので、とっておいたストロカインをあげた。
 Xアプリをインストールしようとしたら、ダウンロードできなくなっていた。

 +3 +6 +9 +7 +6 +5 +7 +9 +11 +8
 なんで分かってくれないんだ。
 自分もそうだが、どうやら我が家系は胃やら腸に病を抱えるタチであるらしい。
 今後はミュージックセンターというアプリを使ってくれとのことだった。

 実際にイコライザをこのように設定してみると、確かに「良く」聞こえる。しかし何か違和感がある。
 ただ、その日思ったことは覚えている。月並みな言葉だ。
 祖父は晩年ヨーグルト漬けになり、胃ガンになり、摘出し、寝たきりになり、最後は血栓で肺炎になって死んだ。
 しかし新しいアプリを入れたところ、バックアップしたデータを綺麗に復元できなかった。

 女性ボーカルの高音が高く聞こえ過ぎる……そりゃ8Kを+11Dbもすればそうなるわな。
 それを心の痛みと称するなら、否定する言葉を持たない。
 俺は機能性ディスペプシア。器質的な異常は見つからないが、不定愁訴に都度悩まされる。
 といっても、データが壊れたとかではない。

 個人的には低音と高音を上げるドンシャリも好きだが、男女関係なくボーカルの中音も上げたい。
 ただキャパがオーバーした。その日の何かが、閾値を決壊させた。
 今は寛解しているが、冬ごろになりちょっとストレスを感じると再発しやがる。
 曲名が表示されなかったり、同じ曲が2つ3つリストに並ぶ些細な(しかし非常に煩雑な)不手際だ。

 というわけで2時間ほど格闘して、自分なりの最適解を見つけた。
 痛みが理由ではない。物理的な痛みでもないし、心の痛みでもない。
 そうなるともう世界の終わりである。症状は気持ちが悪くなるだけ。非常に、気持ちが悪くなる。
 ググってみると、どうやらインターネットアーカイブから元のXアプリをまだ落とせるらしい。

 +3 +6 +9 +8 +8 +6 +7 +9 +10 +8
 泣いた理由は思い出せない。心当たりならいくらでもあったからだ。
 動けなくなり、眠れなくなるほどに。そのストレスでさらに症状は悪化する。
 仕方なく10分ほどかけてダウンロードした(この遅さはリリース当初から不変である)。

 サラウンド、クリスタライザーはオンのまま。バスは66%まで上げて、スピーカーの方のツマミも低音をマックスにする。この音だ……これが俺の望む音!(※素人の妄言です)
 客間まで歩き、絨毯の上に寝転がり、あふれる涙を腕で拭った。
 胃が知覚過敏になり、水を飲んだだけで激しく痛むようになる。食事を否定された人間は長くない。
 ここまできたら使い倒してやろう。セットアップのexeは永久に保管しておこう。

 ドンシャリでありながら、PERFECTでは霞んでいた中音のボーカルも浮かび上がっている。
 自転車を停め、車庫を抜け、いつも通り勝手口から家に上がった。
 アコファイドを握りしめ、涙を枯らして祈るのだ。苦しみのない春の、可及的速やかな到来を。
 データを復元し、適当な楽曲を再生した。半年ほど聞かなかった曲が流れて、思わず目が潤んだ。

 しかし……試しにやくしまるえつこの楽曲を聴くと、やはり少々高音が高いままな気もする。
 人によっては8Kと16Kをガッツリ削ったほうが好みかもしれない。