文学青年保存館

2023 7.25 ブログの更新を停止しました

財布を落として返ってきた話

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 歯医者帰りに薬局へ寄ったら財布が無かった
 持っていたレトルトカレーまるごとバナナと肌荒れクリームを取り落しそうになった。

 慌てて元の棚に商品を戻して回って店を出る。
 かなり怪しい客だがしょうがない。これが人生で初めて財布を落とした男の狼狽である。

 しかし来た道を辿っても財布は落ちていない。
 歯医者に戻ったが無いという。もう一度薬局で訊いてもやはり無いとのこと。

 よもやスラれたか!? とも思うが、現代日本に巾着切りなどまず居まい。
 俺の落ち度だ――タイトなズボンに長財布、これでは落としてしまうも已む無し。

 八方塞がり! ということでトボトボ帰路につく。
 財布の中に特に思い入れのあるものはないが、単純にn万円が入っていた。

 んも~情けない気持ちでいっぱい。
 ロクなことに使われない金でも、いざ失うとここまで心にくるものか。

 だが、俺の町は捨てたもんじゃなかった。
 家に帰ってクレカの利用停止手続きをしていたら電話がかかってきた。
 駅前の交番に財布が届いていますと。

 あとはトントン拍子。
 交番に出向き、財布の中の身分証で顔認証してフィニッシュ。

 しかし俺の中の情けなさはまだ精算されていない。
 そしてこの状況において、とりあえず人の体裁を保つ方法はひとつだけあるのだ。

 俺が謝礼をしたいと申し出ると、届けた人が求めていないので出来ないと言われた。
「そこをなんとか」と喰い下がったところ、交番の警官は強い口調で
「今はもうそういう時代なんで……」と返した。

 んも~ww って感じ。
 もちろん謝礼なんてできればしないで済むのが一番良い。
 でもそうじゃねンだ。人間は見栄と感謝で出来てンだわ。

 どっかの町で昼過ぎに黒い革の長財布を拾ったアナタ。
 ありがとうございました。

 反省し、財布には根付でも付けようと思います。

 妹から貰い、母が一度洗濯をし、今日また妹がアルコール消毒で痛めつけたこの財布は
もうしばらく大事に使われる予定です。